「人生の優先順位は心躍る方」スケーターを被写体にしながら、旅先の風景を切り取る。カメラマン砂川諒さん
2019.12.22
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独学で磨き上げた技術と海外放浪の経験から、カメラマンや外国人向けコーディネーターとして幅広く活躍している砂川諒(すながわりょう)さん。実は、おきマグJOBの撮影も担当しています。私生活では、ライフワークであるスケートボードを相棒に国内外を乗り回っています。
肩書にはこだわらない彼が突き通すブレない信念、それは「生きがいを追求するという人生の優先順位を見誤らないこと」。「心躍る方を選択する」と話す砂川さんの”スケボー、旅、ときどき仕事”な話を聞いてきました。
スケボー少年の初期衝動、30代に突入しても色褪せず
30歳を迎えてからもスケボー楽しんでるって、これもう一生やる気ですよね?
ブランドサポートも頂いていますし、身体が思うように動くうちはそうですね。スケボーは僕にとって相棒であり、自己表現と言った方がしっくり来ます。
僕ら同世代ですけど、中学の時にはだいぶ流行っていましたよね。
2000年前後はスケボーブームで割と皆やっていましたよね。僕も中学1年の時に兄の影響で始めました。いつも練習で行っていた公園はヤンチャな奴らが集まる若干ファンキーなところで。僕はただただスケボーの練習をしていた健全な少年でしたが!
それからブームが去って辞めていく人も出てきて。
中学生ってモテたくて何か始める不純な生き物だから仕方ないとも思うんですけど。僕は周りの仲間にも恵まれていたし、スケボーが本当に好きだったので、今まで続けています。最近ではオリンピックの正式種目になりましたし、世界大会での日本人の活躍もニュースの話題になっていたり、以前からは考えられないほどメジャーな存在になりました。
スケボーの醍醐味って何ですか?
板1枚と4つのタイヤでいろんな技や自己表現ができるところですかね。同じスケーターなのに個性が分かれるんですよ。あと、各地域にスケボーのコミュニティがあって、そこにちょいちょい足を運ぶんですけど、年齢も性別も関係なく、スケボーだけでみんな一つになれるところですかね。80歳でスケボーを始めたおじいさんがSNSで世界中で人気なんですよ。これは象徴的ですよね!
定期的にスケボーの写真展を開催されていると伺いましたが、スケボーと写真を融合させた作品のきっかけは?
ある時に、原因不明の恥骨痛になってスケボーが全くできない時期がありました。それならばと、スケボーを滑る友達を被写体に写真を撮ってたんです。これが僕の「スケボー×写真」の表現の最初だったと思います。
表現を導いてくれた恥骨痛に感謝ですね。
めっちゃ痛かったんですけど、今ならありがとうですよね。
僕も定番の技「オーリー」を伝授してもらいました。
砂川さん、人に教えるのは苦手のようですね。
個展の準備を進める、自宅兼作業場へ
浦添市某所にある広めの1LDKです。
ジョウロの穴にお香を挿すというアナーキーな感性。
カメラを始めたきっかけは?
僕、大学生の時に世界放浪の旅に出ているんですけど、そのブログ用に一眼レフカメラを買ったのがきっかけですね。荷物になるからと説明書を日本に置いて出発したので、使い方もあまり分からずにオートマチックで撮影していました。でもせっかく良いカメラ持ってるのに、機能を使いこなせないのダサいなぁと思って独学を始めました。
海外放浪で印象的だった国ランキングを発表して下さい。
どの国もインパクトあったんですけど、順位を付けるとなると…
3位…インド
インドは5歩進むたびに「何でー!」っていう出来事が起こります。泊まっていた宿に戻ったらさっきまで何も無かったのに部屋が半分ショベルで削られている。どうやら違法建築だったみたいで、行政が強制的に立ち退き工事をしていました。その宿の屋上に居た犬たちの目付きが異常だったので、たぶん全頭狂犬病だと思います。
2位…シリア
「中東」って聞くとみんな危ないイメージ持たれると思うんですが、そんなこと全然なく、イスラム教の人って困っている人がいると助けてくれるんですよ。
宿すら無いような田舎町に行った時に、どうしようもないので夜はそのへんの廃墟で寝るつもりだったんですけど、昼間に意気投合した親子に家に来いよと声を掛けてもらって。飯も風呂もあやかって、ベッドはキングサイズ。豪邸でした!
1位…ラオス
隣国のタイやベトナムに比べると経済的には貧しい国なんですけど、とにかく、人も町も自然も流れる空気も何もかもが良かった!
300km離れた町までバイクで旅をしたんですけど、出会う人みんな良い人でした。自然を愛する風土も根付いていたし、やっぱり旅は「誰と出会い、何を共通するか」ですね!
その海外放浪の経験が「スケボー×旅×写真」という個展のテーマに活かされているわけですね。
滑りたいし、行きたいし、撮りたいです!スケボーは”パーク”じゃなくてやっぱり”ストリート”なんですよ。スケーターが街や自然と共存している様が僕の感性を刺激します。
スケーターっていう人種は結構バカで。街を歩いていて良い感じに滑れそうなスポットがあったら、一旦スマホかなんかで写真に収めておいて、わざわざ後日そこに出向いて滑る。日常生活は下見みたいなものです。
その土地らしい雰囲気を感じたり、直感的に引っかかる場所があれば、そこを背景にスケーターを被写体にしたい。スケーター仲間で遠征に行った時は、誰よりも早起きして周りの写真撮ってますからね。「こんなスポットあったんだけど~」で1日のスタート。それを今回の展示会では、県外・国外にまでフィールドを延長していった感じです。
額縁まで自分で作るんですね?
ゼロからイチを創り出すのは好きですね。自分の写真にしっくり来る額縁が探しても無くて。なら作っちゃおう!って。個展ではぜひ額縁までを作品として見てあげて下さい。
額縁だけじゃなくて、このテーブルも自作しました。家具や室内小物の制作の依頼も引き受けています。
みんな肩書きに縛られ過ぎている。活動の源は「全部好きなこと」
砂川さんの屋号は「YOLO creation(ヨロークリエイション)」。
You Only Live Once.(人生一度きり)の頭文字を取った造語で、自分の人生だけでなく相手の人生にも何か良いことを創造(create)していきたいという思いから名付けられました。
砂川さんの現在の収益は、「写真や動画のカメラマン」、「海外船のクルーハンドリング・コーディネート業務」の2つの事業が柱で、その他「インテリア製作」などの依頼です。
ガンガン動いてみなぎっていますね!
みんな肩書きに縛られ過ぎている気がします。ですから最近はあまり深く考えず、出来る出来ないよりも『面白そう!』と心が踊ったらチャレンジすることにしています。各仕事はそれぞれリンクしていて相乗効果もありますよ。
好きである、が共通項ですね。
人間好きなことをしている時が一番輝いていますし、時間忘れて没頭して努力が努力ではなくなる。おかげで毎日楽しいです。自分から湧き出た『やってみたい』という想いは、自分が素直に受け止めてあげてチャレンジするのが、豊かな心に繋がると今は思います。
フリーランスは完全歩合なので、辛い時期もありますが自分の好きなことであればそれだけで幾分か頑張れます。結果を出せたらその分の対価も付いてきますし。
これまでの仕事遍歴は?
大学卒業後は、観光関連団体で4年間働き、その後はコンサル会社に就職しました。
独立したきっかけは?
コンサル会社では最も若手で右も左もわからない状態だったので、繁忙時には朝から夜中まで会社から出ずに業務をこなしていました。その時期に、仕事をしている夢を連続で見る日々が続きまして。心身ともにこれはまずいなと。ちょうど30歳になるタイミングでもあったので『人生一度きりだしどっちに転んでも良いから、とりあえず自分の好きなことをやってみよう!』と思い、独立しました。
人は誰でも得意・不得意がありますよね。僕の場合、デスクワークは不得意で、表現や人と接することが得意なことだと再認識しました。多くの経験を積ませてもらいましたし、前職の皆さんには感謝しています。
砂川さん自身の今後の働き方はどう展開していきたいですか?
これからも旅先で出会う人や街や自然を写真に収めて…自分の活動がコンテンツになるような働き方をしたいです。フットワークが軽いことは自負しているので、県外海外問わずどこでも飛んでいけます!特に沖縄はアジア方面へのアクセスがとても恵まれているので、東京から人件費かけて行くより自分が出向いた方が効率的ではないですかね(ご依頼お待ちしています)。何よりもワクワクした気持ちで居続けたいです!
実際に「スケボー×旅×写真」の個展に行ってきました
取材を行った2019年12月はちょうど、自らの生き様を映し出した「スケボー×旅×写真」の個展が開催されていました。
外人住宅の中にあるおしゃれなカフェの一角をつかってスケボー写真を展示しています。
空間と手作りの額縁、スケボー写真と外から差し込む日差しが織り交ざって、めちゃくちゃ居心地良い場所。
土地の匂いがする風景にスケボーが自然と入り込んだ写真が並んでいます。被写体としてのアクセントを見せつつも、どれもその土地のリスペクトを感じられる作品ばかりでした。
今回はオーナーさん協力のもと、特別にスケボー型のアイシングクッキーも販売。かなり売れているらしく、この日は最後の1枚でした。
12月28日まで開催されているので、ランチがてらに足を運んでみては。
展示会info
【期間】2019.12.9(月)~2019.12.28(土)
【場所】rat & sheep(浦添市港川2-13-9)
【日時】10:30〜17:00 / 月~土(金、土は 19:00〜24:00も営業)
【定休】日曜・ 祝日の月曜
自分の心に正直に生きる砂川さん。好きだからこそ、ライフワークが仕事になり、仕事がライフワークになる。人生の選択は意外とシンプルです。
やりたいことを丸ごとやってしまうフットワークの軽い柔軟な働き方は、変化が求められる社会を生き抜く指針になりそうですね。
<取材・文:ナガハマヒロキ/撮影:蓮池ヒロ>