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人生の大きなテーマの1つとも言える「仕事」とは、自分にとって何なのか。また、何のために稼ぐのか。誰しもが一度は考えるであろうこの問いかけに、皆さんは何と答えますか?
皆さま、初めまして。RBCiラジオでADを務める、新人ライターの黒島ゆりえです。最近、姓名判断師に「一言多いから気をつけて」と言われたのですが、今この記事を書きながらそれを痛感しています。
さて、冒頭の話に戻ります。仕事とは何なのかについて、私が深く考えるきっかけには、今記事でご紹介する「株式会社みたのクリエイト」とその社長の田野治樹(タノハルキ)さんの存在がありました(かなり影響を受けていることは、断言しておきます)。
元みたのクリエイトのデザイン部兼広報だった私が、社内で働いていたからこそ伝えたい、みたのクリエイトが大切にしている「仕事」への姿勢とは何なのか。その生き様や裏話をお届けすべく、社長の田野治樹さんへインタビューしました。
古巣への感謝をしれっと交えたりなんかして、私利私欲混じりな記事になりますことを、みなさま予めご了承ください。笑
まずは「株式会社みたのクリエイト」についてご紹介します
写真を見てお気づきでしょうか。白い長テーブルの壁側奥の1席分が「社長室」です。オフィス全体が見渡せる一角、特に個室でも何でもありません。
「株式会社みたのクリエイト」は、沖縄県内で複数の飲食店を経営しています。2019年現在は、定食屋の「鳥と卵の専門店鳥玉」を4店鋪、居酒屋の「動く町」を3店舗、合計7店舗を展開中です。
過去にみたのクリエイトが企画・経営した店舗には、目利きの銀次・生け簀の銀次・いぶし銀次郎・グリル銀次・火鉢屋・シェフズグリエ・ブルックリンハウス…などがあります。
私がみたのクリエイト在籍中に誕生した店舗の1つ、定食屋の「鳥と卵の専門店鳥玉」が誕生したきっかけや商品開発の裏話、そして、これから行う社会貢献についてのお話を伺いました。
お久しぶりです!相変わらずチャラついてますねー。
久しぶりだな!ってチャラくないわ!俺だってもう、42歳だぜ。
ちなみに、いつも着ているゼブラ柄の服って、どこで買っているんですか?笑
ネット。国内にはないんだよね。ゼブラ柄のものは全部海外の服。ジャケットなんかは、マジシャン用の衣装だし。同じジャケット12着くらい持っているからさ、俺。
こんな派手な服を着てる人、見かけないですよ。
ゼブラ柄が好きっていうよりモノクロが好きで…ってこれ何の話?笑
ですね(笑)。では本題に入りましょう。
意外な展開!鳥玉のアイデアは東京ギャルとの会話がきっかけだった
私、田野さんが初めて鳥玉の話をした時のこと覚えてますよ。いきなり事務所に入って来て、大きな声で「俺は良いこと思いついたぞー!」って叫び出しましたよね。
俺、そんなこと言ってた?
言ってましたよ。その場にいたメンバーを集合させて、ホワイトボードに「鳥の鳥による鳥のためのオンステージ」って鳥玉のコンセプトを書いて、鳥玉のアイデアを語り始めた。笑
あー、なんか覚えているかも…。
事務所のメンバー間では「田野さんがまた何か言いだした…」という感じ。田野さんと私たちとの間に温度差があった。笑
また始まったよって感じだったな。笑
鳥玉のアイデアは、いつどんな発想から生まれたんですか?
まず、鳥玉中城店のオープン前、この建物はつけ麺屋だったでしょ?そこが撤退する時に「次に入らないか?」って話があったの。内装や厨房設備を保ったままの居抜きで使っていいよってことになったから、それなら初期費用が少なくて済むからリスクもないしやろうかなと思ったの。
それから、何の業態にしようかと考えていた頃、東京に行ったわけよ。そこで女子みたいな奴らと飲んでた時に思いついたんだよね。
女子みたいな奴って…。ギャルですか?いいですね〜。
そう、ギャルたちと飲んでいて(笑)。その時に「好きな食べ物は何?」って聞いたら「玉子が好き」って言ってたからさ。
ええっ。嘘でしょ!?鳥玉をオープンした理由ってそれだけですか?笑
マジでマジで。それで、言われてみれば玉子って朝も昼も夜も食いよるなーと思ったの。朝は玉子焼きを食べて、昼は親子丼を食って、夜は鳥ステーキとか。ほら、一日中食えるじゃん?
(手が玉子のカタチだ…)なるほど。食べられますね。
でも、玉子だけの専門店だと商品が作り難い。だから「鳥と卵」にしようかなと。間口が広い上に食べる回数も多くて、さらには世界中で食べられているでしょ。
あー、言ってましたね。鶏なら宗教的な食事のタブーにもあまり関係ないと。
そう、鶏はないのよ。だから「鳥と卵の専門店」にしたの。
鶏と玉子ではなく、微妙に漢字を変え「鳥玉」にしたのも田野さんらしい発想ですね。笑
準備期間は約3ヶ月!出店の失敗談〜出し巻き玉子事件〜
ところでタマゴの漢字って、生の状態を表す場合は「卵」、料理とか食用の場合は「玉子」って書くんですよね。
よく知ってるじゃん。まあ、ややこしいからなんでもいいわ。笑
(記事書くとき困るやつだこれ…)鳥玉を出店すると言い出してから、すぐにオープンしましたよね。準備期間ってどれくらいでしたっけ?
どうだったっけな。2〜3カ月とかだったんじゃない?
出店までのスケジューリングとか、どうしていましたか?
全部が同時進行だよね。商品開発しながら皿を探して、スタッフを募集して、オープンの準備して、とりあえずお店を開店しちゃうみたいな。あまり良くはないけどね…。最初は出し巻き玉子なんて、スタッフが巻いて作っていたじゃん。あんなの続けていたら一生かかるわ。笑
崩れるか崩れないかの極限まで出汁を閉じこめた、プルプルの出し巻き玉子。開発する際、事務所のスタッフが何十種類と試食をして、意見交換を行いました。改良に改良を重ねて完成した、鳥玉の渾身の一品です。
はじめこそはスタッフを集めて、出し巻き玉子の巻き方講習をやっていましたよね…。
そうそう。でも、最初の3日くらいで「あ、これはダメだな」ってわかった(笑)。鳥玉の出し巻き玉子を作る専用の機械を特注できる会社を探したよね。
それで作ってくれる会社が見つかって、急いで機械を作ってもらった。その機械を店舗に導入してからは、味のクオリティも安定したね。
子どもが働けるレストラン構想と、鳥玉からアプローチする社会貢献について
そういえば少し前に、社長の個人ブログで「児童支援をする」って内容を読みました。小・中学生でも働ける場所を作りたいと。なぜやろうと思ったんですか?
これが深いんだけどね。まず、俺の娘が不登校だったわけ。学校に行くのが辛かったんだろうな。
それで、一人で家にはいさせたくなくて、働かせることにしたの。今はみたのクリエイトのセントラルキッチンで週5日働いているんだけどさ。そうやって働くと稼ぐじゃん。すると変わったんだよね。
どう変わったんですか?
今は伸び伸びとしているよ。稼いだお金を好きなアーティストに注ぎ込んで、楽しそうにしているよ。いいじゃんね、自分で稼いだお金なんだから。
働くことで前向きになれたんですね。素敵なお話です。
俺さ。働くことを通して他人に認められているって感じられたり、自分が稼いだお金で自分の好きな物を買える幸せって、働くことでしか得られない肯定感だと思うんだよね。
確かに…その通りですね。
それから何か子どもたちのために事業ができないかなと思って、児童支援のことをブログに書いたら、西原町から連絡が来たの。
それで今、一緒にお話を進めていて。中学生でも働けるようなレストランをプロデュースしているところ。
お客様は一般の人もOKなんですか?
もちろん。あと、働くのは中学生だけに限定するわけじゃなくて、おばあちゃん、おじいちゃん、高校生とかもね。地域を繋ぐコミュニティーって感じ。
それから、「子ども0円食堂」ってイベントも企画中なんですよね?
そうそう。鳥玉のグランドメニュー更新に合わせて、地域の子どもたちや児童養護施設の子どもたちを対象に、鳥玉の商品を無償で提供する予定。意図は3つあってね。
1つは、子どもたちに食べてほしい。養護施設の人たちっていうのは、少なからず何かしら心に傷を負っているはずだから、美味しいものを食いに来いよ!っていう思い。
はあ。相変わらず、田野さん優しいですね…。
2つめは、人のために何かをしてあげたいって空気を会社の中に作りたい。だから児童養護施設の子どもたちを招待するの日は、俺もスタッフもみんな無給で呼ぶつもりなの。純粋な気持ちで来てほしいから。
ボランティアなんですね。
3つめは、今まで食べてこなかったであろうお客様に来てもらって、美味しいと思ってもらえたら、またリピートしていただければいいじゃん。宣伝効果にも繋がるし。社会貢献ができて、社内の空気を変える手段にもなって、宣伝効果もある。この3つが揃うんだよね。
誰かのためにやることが、結果的に自分たちのために繋がっていく…と。素晴らしい試みですね。
お客様に甘すぎる商品設計のお話「仕方ないじゃん、だって美味しいんだもん。」
鳥玉のグランドメニューが変わるにあたって、全然売れなかった料理を紹介した記事【逆に全く出ない商品を解説付きでご案内しましょうか。】があったじゃないですか。あれ、めっちゃ面白かったです。
でしょ?あの記事を投稿した結果、カルボナーラや天津飯なんて、いい加減にしてってぐらい出たからね(笑)。見ている人いるんだなって思ったよ。
売り上げにも繋がっていたんですね。確かに私も、あの記事を読んで「食べに行かなきゃ!」と思いました。笑
別に隠していてもしょうがないし。
それでも、売れた商品はグランドメニューには残さないんですか?
残さない。だって、売れないものは売れないんだもん。
でも、粘って残し続けていたメニューもありましたよね?
それは俺が好きだから。天津飯がなかったら凹むもんね。間もなくメニューから外すけど…。でも新しくグランドメニュー入りするガーリック半身丸焼きが好きだから、今は天津飯がなくても大丈夫。
ーではここで、塩水鳥のガーリック半身丸焼き定食を紹介しますー
こちらが鳥玉イチ押しのルーキー「塩水鳥のガーリック半身丸焼き定食 980円(税別)」。
今まではパルコシティ店限定の商品でしたが、好評につき、この度グランドメニュー入りが決定しました。
ご飯と汁物(お味噌汁と鶏だしから選択)、そして漬け物がセットでついてきます。
一口食べればこの表情!思わず目が見開いてしまうほどの美味しさです。
まず驚いたのは、しっとり柔らかな食感に、肉汁まで感じられる点。塊肉はパサついたり固くなりがちですが、この半身丸焼きは違います。スチームオーブンの蒸気で焼き上げる調理工程が要のようですよ。
ガーリックの香ばしさとハーブの爽やかさが心地よくループ。最後までペロッと食べ進めることができます。もも、むね、ささみ、手羽の4種類の部位が一挙に味わえる、贅沢な一品です。
ー以上、塩水鳥のガーリック半身丸焼きのご紹介でしたー
田野さんの好きなメニューが入っていないとダメってことですね。
そうそう。だって一つは絶対にないと、俺が行く楽しみがなくなるじゃん。ちなみに俺さ、正直なこと言うと、チキン南蛮が実は苦手なんだよね…。
本当ですか!?タルタルソースとか、あんなにこだわっていたのに?
俺、酸っぱいのが苦手なんだけど、タルタルソースって酸っぱいじゃん。だから、絶対に酢を入れない甘いタルタルソースを作ろうって考えたの。「これみんな美味しいって言うだろうな」と思って作った。
ーではここで、塩水漬け鳥もも肉のチキン南蛮定食を紹介しますー
これが噂の黄金タルタルソース。荒く割ったゆで玉子を惜しげもなく使用しているため、食べ応えがあります。このタルタルソースだけでご飯が進んでしまうので、ソースの概念を疑います。笑
実際に「ご飯と一緒に食べられるおかず」とも謳っているので、どう捉えるかはお客様次第です。
この黄金タルタルソースを使用しているのが、もはや説明不要の鳥玉が誇る看板メニュー「塩水漬け鳥もも肉のチキン南蛮定食880円(税別)」です。
だし巻き玉子(かつお出汁と日替り出汁から選択)、汁物(お味噌汁と鶏だしから選択)、ご飯、漬け物がセットでついてきます。
どのメニューにするか迷った時、まずはこれを注文すれば、間違いありません。ボリューム満点なので、一般の成人男子でも、お腹いっぱいになりますよ。
ー以上、塩水漬け鳥もも肉のチキン南蛮定食のご紹介でしたー
まあでも、みんなが好きそうな料理に寄せつつ、自分が好きなメニューも入れて、バランスを取っているんですね。
そうなの。ちなみに、チキン南蛮は鳥玉の売り上げの約40%を占めている超看板メニューなんだけど、原価率は全部のメニューの中で二番目に高いからさ。
それって…利益率が低いってことじゃないですか!?
もっと言えば、グランドメニュー入りする塩水鶏肉のガーリック半身が、一番原価率が高い。チキン南蛮とガーリック半身の2つは、パルコ店の売り上げベスト1と2を争ってるからね。
儲け出す気はあります?笑
仕方ないじゃん。だって、美味しいんだもん。出るんだもん。人気なんだもん。
どんだけお客様に優しいんですか…。
あとさ、グランドメニューを変える記念に、生卵をエンドレス無料にするよ。
(エンドレス無料って何だろ…)どういうことですか?
11月18日(月)〜12月2日(月)までの期間限定で生卵を無償で食べ放題にするの。何個食べても無料だから皆さん、食べに来てね。
(田野さんが相変わらず自由過ぎる…)
みたのクリエイトのこれまでとこれからに想いを馳せて
「あなたの為に」
これは、2019年7月に創業20周年を迎えたのを機に変えたという、みたのクリエイトの新しい企業理念です。田野社長が考える仕事のベースには、必ず人に対する思いやりがあります。
お客様に美味しいものを届けたいがゆえに、原価率の高い商品をリリースしているのは、私が働いていた頃から相も変らずです。そんな田野社長の温かい人柄やクリエイティブな発想、それを実行するスピード感が大好きで働いていたことを、インタビューをしながら懐かしく思いました。
私が、みたのクリエイトを退職した、2017年4月30日。田野社長は自身のブログにこのような記事を投稿してくれました。
【広報ゆりえ。】by 株式会社みたのクリエイト
まるで雛鳥の巣立ちを見守る親鳥のような優しい言葉の数々に、田野社長がどれだけ優しく見守ってくれていたのかを知りました。今でも記事を読み返すと、感謝の気持ちが尽きません。
パソコンカバーもスマホカバーもゼブラ柄。そして、ぬいぐるみのゼブラもいました…。
田野さん、創業20周年おめでとうございます。みたのクリエイトで働けたことは、私の自慢であり誇りです。これからも企業理念の「あなたの為に」を追求した思いやりとクリエイティブな発想で、私たちを驚かせる商品開発やイベント企画を届けてください。
最後に読者の皆さま。私利私欲な記事に最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
(撮影・編集/OKINAWA GRIT 代表 みやねえ)