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「インターネットは現代の鉄砲」沖縄経済の若きリーダー上間弁当天ぷら店の上間社長が考える、ビジネスで大切にすること

水澤 陽介

2018.04.16

水澤

上間弁当天ぷらに入社する直前に、財務トラブルがあって。えっと、一時は2億円の負債があった? いまは、すべて返済して2018年は売上7億円を見込んでいるんですか!?

水澤

その秘訣は、財務管理を理解することなんだ、と。店舗での会計は、iPadを使って業務最適化していて、うんうん。これからは、AIの販売予測エンジンを活用しながら、販売予測から業者発注の自動化を組み込む……飲食業界の革命児ですね(笑)。

水澤

上間弁当天ぷらだけではなく、沖縄のマーケットを広めていくために、U&I(ユーアンドアイ)株式会社を立ち上げて、経営セミナーや経営の仕組みの構築を支援するクラウドサービス「Mango」を開発したんですね。

しかも、その「Mango」を引っさげて、スタートアップ企業を創出と育成する「Okinawa Startup Program」に登壇して、プレゼンを行なうなんて。めちゃくちゃ、型破りじゃないですか(笑)。

水澤

それでいて、「うちの天ぷら、お肉、そばって美味いやん」と言っちゃうの!?

そう今回の主役は、上間喜壽(うえまよしかず)さん!!!

・・・

・・・・・・

こんにちは、ライターの水澤です。驚きの情報が多すぎて、私の頭がパンクしてしまい、ご挨拶が遅れました。

今回、わたしが訪れたのは、沖縄市にある「上間弁当天ぷら店 登川店」。他にも、沖縄県内に6店舗を経営する「上間フードアンドライフ」は、2018年2月に自社で初となる沖縄そば屋を、北谷町にある名嘉睦稔氏がプロデュースした建物AKARA内にオープンしました。

さらに、飲食店の経営にとどまらずに、経営のコンサルティングやWebサービスを展開する「U&I株式会社」代表の上間喜壽さんに話しを伺いました。

経営理念と飲食店の未来について。そして、これからの時代を働くうえでの大切にしたいマインドに関しては経営者に限らず、この春、企業に勤め始めた新卒の子たちにも知ってほしい。そんな思いを込めて、上間さんのインタビューをお届けします。

大学卒業後、会社の立て直しのために東京から沖縄へ

水澤

お久しぶりです。

上間さん

こんにちは、約1年ぶりになりますね。

水澤

スタートアップカフェコザ」さんが主催するプログラミングスクールでお会いした以来ですね。

「HTMLやPHPといったプログラミング言語を学ぶことによって、作業の工数や大まかな費用を知ることができ、きちんとWeb開発会社と予算を交渉できるんです」と上間さんは語っていた。

上間さん

僕も会社も、あれから先へと進んでいますよ。

水澤

あのときもそうで、経営者でありながら、どうしてそのような視点を身につけてこられたのか。もう、聞きたいがいっぱいありますが、まず上間フードアンドライフの入社当時から聞きたいです。

上間さん

僕は、東京の大学に通っていて。正直言いますと、就職活動に乗り遅れました笑 気づいたら、すでに4年生の夏で、友達たちも就職を決めていて。そんな頃に、親から「今度、新しい事業をやるから。沖縄に帰ってきなさい」、と。

水澤

そのまま、東京で就職する選択肢もあったのでは?

上間さん

もともと、沖縄に帰ることは決めていましたね。だって、学生の頃に、アルバイトをしてきて。その傍ら、親が農業をやっていたので、生産していたマンゴーを東京で販売をしていたんです。

水澤

(アルバイトと個人事業を両方やっているなんて、器用な人だな)

上間さん

アルバイトって、マニュアルに従って仕事をする、その結果時給いくら分をもらう形態でしょ。それよりも、実家のマンゴーを売ったほうが儲かっていて、月20万円以上稼げていたんです。

だから、企業に就職するよりも、ゆくゆくは自分で考えて、商売するほうがいい。だから、親の一声が後押しになりました。あと、仕組みフェチのところもありまして。「そもそも、これはどうなっているんだろう」って物事の仕組み立てて、理解するのが好きだったんです。

水澤

親が経営をしていると仕組みが気になるものですか。

上間さん

いや、特にそういうわけでもないですよ(笑)。さて、これで沖縄に帰られるぞ、と。でも、実際は違っていました。

「上間弁当天ぷら店 登川店」は、上間さんが大学卒業前に建てられたという。

上間さん

「上間弁当天ぷら店 登川店」の土地をキャッシュで買ったものだから、大学卒業する手前に財務トラブルにあって。親はへこんでしまうわ、家族の雰囲気がガラッと変わったことを覚えています。

水澤

それを知りつつも、入社することに恐怖はなかったんですか?

上間さん

よく周りにも言われますが、楽観的な気持ちがあって。いわば、根拠なき自信が当時はあったんです。あと、子どものときから見てきた上間弁当天ぷらという、「家族で働く場所」が無くなる事に対して、すごく抵抗感がありました。かけがえのない、唯一の場を無くしたくない、そんな気持ちでしたね。

人のせいや環境のせいにすることは、クリエイティブな発想をマイナスに使っているだけ

水澤

そこから、上間フードアンドライフが、一時は2億円まで負債を抱えながらも、どう立て直したんですか。

上間さん

とにかく我慢したんです。僕自身経営をしていくなかで、財務や会計を理解し、事業の見直しを行なうなどこだわっている細かなディテールはいくつもありますが。僕が経営者として特出していると思うのは、2、3年のプロジェクトが今すぐに成功しなくても、とにかく我慢できることなんです。

水澤

我慢強い、男。上間喜壽さん。

上間さん

後々、成果につながるとわかっていれば、今は喜んで我慢しましょう。例えば、はじめ僕が入社したとき、給料が低く設定してもらいました。あとから、事業を立て直せると思っていたので。

水澤

ぶっちゃっけ、どのくらいもらっていましたか?

上間さん

新卒1,2年目は10万円ももらっていなかったかな。赤字を出しているなか、僕が給料としてもらうより、その分事業に投資したほうがいい。

水澤

新卒の子がそんなマインドを持ち合わせていないと思いますが……、なぜ、そう思えたんですか。

入社間もない頃は、給料の大半を本に費やしてきたという。

上間さん

やっぱり、個人と会社、両方ともお金がないことを経験しているので。たとえ、経費を節約しても、売り上げに効果が出ないことはそこで実感していた。今年で、上間フードアンドライフは創業10年目を迎えますが、売り上げだけを求めていけない、でも数字を求めないわけではない。そのバランス感覚が身についてきたと思いますね。

水澤

上間さんは沖縄の経営者としてとても稀有な存在なんだと感じているのですが、新たなビジネスを展開するにしろ、既存のビジネスを安定させるにしろ、商売で大切にしていることはありますか。

上間さん

やっぱり、商売において、「自責(自己責任)」「明元素(明るく元気に素直に)」「受容」、この3つは個人でも会社でも柱にしていますね。マーケティング戦略やファイナンスなど、ビジネスを成り立たせるものはありますが、この3つが根本的にあれば知識や技術は後から手に入る時代と思う。

水澤

マインドを大切にしているなんて、意外ですね。

上間さん

これは、脳の論理構造を100パーセント活用するためには必要な要素なんです。科学的に突き詰めると、結果として3つ(自責・明元素・受容)に行き着く。めちゃくちゃシンプルで、強力な思考パターンです。

水澤

いわゆる、原理原則といえばいいのか。

上間さん

そうそう。例えば、会議をしていると、人のせい、環境のせい、できない理由を並べる人っていますよね。僕からすると、クリエイティブなんです。エネルギーをマイナスに使っているだけで、ポジティブに転換する癖づけができれば、新たな発想を生み出す可能性があって。だから、うちの社員にも、この3つを身につけてほしいから、とにかく言い続けています。

水澤

上間さんのように、発想を転換できるものですか。

上間さん

いえいえ、一人ひとりのステージやこれまでの経験や情報の量が違うので。捉え方が違うし、だからメンバーには気づいてもらうために何度も何度も伝えることが大切です。

水澤

人材教育に力を入れているんですね。

上間さん

たまに、気付ける人たちがいるんです。極論をいえば、「会社がよくないのは、私のせいなんだ」だとね。そこから、どうやってこの環境を変えていくんだろうって、思考が変わった瞬間、本人は変わるんです。そうすると、会社から待遇はどんどんよくなっていく。

水澤

思考が変われば、行動が変わっていく。

上間さん

こうした視座が高まると、その子自身の周囲も次第に変わってくるんですよね。そうそう、子どもと親との関係性と一緒で。子どもは、親の目線に立つことができないけど、親は子どもだったから気持ちはわかっていて。こうした視座の高さが人としての差になって出てくると思いますね。

上間弁当天ぷら店FacebookページからOPENしたばかりの上間天ぷら沖縄そば店スタッフたち

水澤

社員を育てていくことも、先ほどの我慢に繋がってきますね。

上間さん

はい。だから、社内の待遇をどんどん改善しているところなんです。ビジネスマインドでいえば、僕はすごく良い投資をしていると感じています。人に投資することは、会社が安定したり、成長するスピードが早くなったりするので。

水澤

良いこと尽くめ、といえますね。

「ITは、現代の鉄砲である」上間弁当天ぷら店は超生産性企業を目指していく

水澤

様々な事業を展開する、U&Iについてもお聞きしていいですか。

上間さん

U&I株式会社では、経営セミナーや経営コンサルを行なっていますね。

上間さんのもう一つの会社であるU&I株式会社

水澤

飲食から少し離れていますね。

上間さん

こうした事業展開には、沖縄全体の市場を高めることに繋がってくると思っています。

水澤

どういうことですか?

上間さん

商売していると、どんな業種でも隣の芝生は青いみたいな、ついつい同業他社を見てしまう。価格はいくらだろう、そしてどんどん安くしてしまって、疲弊していく。

上間さん

でも、商品やサービスの価格帯は、そもそも買う側が決めるもので。競合同士が決めるものではないんです。

水澤

なるほど。

上間さん

とくに中小企業では、こうした事業について話し合える、相談しあえる、横の交流が少ないんです。だから、経営セミナーを開催して、僕たちが持っているノウハウをまずは伝えていく。

結果として、良い商品や良いサービスが出てきて、良い経営者が育ち、スタッフを大事にする、結果として沖縄の市場も良くなっていく。そんな好循環が生まれると思うんです。

上間さんのFacebookより

水澤

上間さんのこと、好きになってきました(笑)。 Webサービス「Mango」についてはどうですか、自社開発をしたんですよね。

上間さん

Webサービスって、現代の鉄砲なんです。江戸時代に織田信長が大阪の商人から鉄砲を買ったみたいに、現代を武装していく中で、めっちゃ安くて、めっちゃ効く、飛び道具といえばITなんです。

水澤

ほほう。

上間さん

海外の企業を視察したときに、グーグルスプレットシートを使って全社員でドキュメントを共有したり、クラウドサインのようなWeb上で契約書を提携したりしていました。

決して、対面でやりとりすることが悪いのではなく、生産性だけみれば低くなるので。でも、いくら国や従業員が叫んでも、企業のトップが変えない限り、仕組みは変わらないでしょ。

水澤

さらに、Webなら国を超える可能性もある、と。

上間さん

この武器、使わない理由があるの? と思いますね。ただ、悲しいことに他の経営者からヒアリングをすると、現在のIT化の波について、パーソナルコンピュータが出てきた頃の延長戦でしか捉えていない。「ちょっと便利だよね」みたいな。強力な武器で、もう主戦場であることを気づいていない人が多いんです。

水澤

何がネックになっていると思いますか。

上間さん

Webは、とにかく多産多死で何が当たるかわからない。不透明な市場だから手を出しにくいでしょうね。でも、僕なりの投資マインドからすると、2、3年間は我慢しながら、これからの果実を得られるなら挑戦しますね。

水澤

すでに、店舗で実装しているサービスはありますか。

上間さん

店舗に来たとき、スタッフが会計をiPadで行なっているのは見ました?

業務の最適化をしながら、iPadから会計システムに自動的につながっているので、お店で会計するたびに処理されていきます。

水澤

仕事がだいぶ楽になりますね。

上間さん

あと、AIを活用して見込み客数を予想する仕組みを伊勢のゑびやさんという会社が提供していまして、そのサービスをiPadに繋げ、製造効率化と発注業務の自動化までやっていきたい。そうすると、お客さんが何時に、どのお店で、トンカツ弁当が何個買ったのかわかるでしょ。

水澤

(なんか、もう色々すごい…(笑))

上間さん

もうね、90パーセントぐらいの精度を上げられている話しなので。飲食店のビジネスモデルが一新されて、お客さんが来るタイミングで、欲しいものが完成しているみたいな。超高速な外食に変えられるんです。

水澤

まるで、夢の世界だな。廃棄もほとんど出ないし、エコですね。

上間さん

不確定だった未来に対して、おおよそのラインを引けるというのは革命なんです、飲食に対しては。

水澤

まさに、現代の鉄砲といえますね。これからの事業展開についても聞いていいですか。

CATER 4UのFacebookページより

上間さん

これからは、事業化の多角化を図っていきますね。その1つが、上間フードアンドライフの新ブランド「CATER 4U」。もともと、僕たちが蓄積してきたお弁当屋としての資産を活用されているんです。

水澤

資産とは?

上間さん

例えば、会議や結婚式などで500名以上出席するなど、人数が増えれば増えるほどケータリングを対応できる企業が少なっていく。大会場を持つホテルのシェフでさえ、昨今はとにかく忙しいし。20、30席の店舗では対応しきれない。

水澤

お店をクローズしてまで、対応すべきかという問題もありますもんね。

上間さん

だから、事業の多角化を考えたときにケータリングサービスはいい。そもそも、資産として何百個の重箱など大量に作れる母体がありますので。あと、企業と従業員との関係性にも良い影響を与えているんです。だって、家族や友達に言いたくなりますよね、おしゃれなブランドに携わっているなら。

CATER 4UのFacebookページより

水澤

既存店も含めこれまでお会いしたどのスタッフさんもイキイキしていますよね。

上間さん

気をつけないといけないことは、飲食業の怖いところは楽しいんです。とにかく楽しい。なぜなら、子どもでも、家族にご飯を作って美味しいと言われたらうれしい。だから、昔から飲食の楽しさって染み付いてきて、自己重要感を満たされる行為といえるんです。

水澤

いい意味でも悪い意味でも楽しさがある、と。

上間さん

あと、飲食店ってイメージしやすいんです。お客さんに美味しいねと言われて、お金をもらう。わかりやすさから安易に若い人たちも仕事として選びがちで。だから、競争が激しくなっていく。儲かりにくいビジネスモデルともいえるんです。

水澤

こうしたリスクを抱えることに気づきにくいものですか。

上間さん

だって、楽しさを勝っちゃうし、難しいところです。僕たちが多角化する理由もそこにあります。

水澤

他にも、事業の多角化として考えていることはありますか。

上間さん

経済が伸び続けるアジア市場にも、ビジネスの視野を広げて展開していかないとは思いますね。たとえ、沖縄の人口は上昇傾向であるといえども2025年にはピークを迎え、減少傾向にありますので。だから、海外の観光客にもどう認知されて、ニーズを広げていくのか。もしくは、市場が伸び続ける地域、とくにアジアに展開することは視野に入れています。

そのために、僕たちはITを活用して、超生産性型で、日本らしいクオリティの料理を出せるお店で勝負したいですね。YouTubeなど個人でも発信できる社会では、経営者にとってはライバルが多い、戦国時代と思っているので。

楽しみながらビジネス展開を行う上間さん、そのお話を聞いて

”スマホが出たとき、便利だよねとなっていたけど、今はスマホがないと危機感を覚えるのと一緒”

飲食をメインの事業としながらも、経営における全面的なIT化を推し進める上間さんはそう語ります。

その根幹には、投資することがゆくゆくの事業の成長には欠かせない。そのための我慢強さが必要という、マインドを強く感じることができました。

将来を見据えて、社員と共に着実に実績を積み上げていく上間さん、沖縄を代表する経営者としてこれからどのような展開を行っていくのか、その活躍から目を離せません。