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大学進学を機に地元の福井県から沖縄に移住して、早いもので7年目に突入しました。ライターふっさん(@fujisawatonjiru)です。初めておきなわマグネットで書かせていただきます。よろしくお願いします〜!
食べることを愛してやまない僕は、移住する前はとにかく「沖縄の食べ物が口に合うか」ばかり気にしていました。今はその心配が嘘だったかのように沖縄料理が好きになり、それが転じて、大学卒業後は沖縄唯一の調味料メーカー「赤マルソウ」で働いていたのです。
今回は移住7年目の僕が、これはおいしいと思った赤マルソウのおすすめ沖縄県産品「豚肉みそ」のおいしさの秘訣を元社員の特権を生かして探ってきました。
そもそも「豚肉みそ」って何だろう?
ひと言で説明すると、豚肉みそは沖縄県民の常備菜。沖縄では「油みそ」という名前で親しまれています。みそに豚の脂や豚肉などを加えて炒めたシンプルさ。火を通すことで保存食となり、昔は県内の多くの家庭で作られていたようです。
ちなみに、一般的な油みそのことを沖縄方言で「あんだんすー」と言います。この豚肉みそを最初に会社を挙げて製造したのが、僕が以前勤めていた「赤マルソウ」なのです。
創業68年!沖縄の食卓を支えてきた「赤マルソウ」をサクッとご紹介
赤マルソウは、2018年に創業68年を迎えた老舗の調味料屋です。創業当初は、日本人の食卓に欠かせない調味料といわれる「みそと醤油」を中心に製造していました(現在は県外に醸造を委託)。
赤マルソウのみそと醤油は、スーパーはもちろん、沖縄県内の学校給食や飲食店などにも卸しています。そのため、多くの沖縄県民が一度は赤マルソウのみそ、醤油を口にしていると言えるでしょう。
現在、自社工場では、豚肉みそやドレッシングを中心に製造していて、これらの商品は那覇空港や国際通りをはじめ多くのお土産売り場にて販売されています。
ちなみに、元社員ふっさんの一押しドレッシングは、「島とうがらしドレッシング」。サラダ以外にも炒め物やタコライスにも合うんです。
糸満市にある赤マルソウの工場に潜入!「沖縄豚肉みそ」ができるまで
糸満市西崎町に構える赤マルソウのオフィス兼工場にやってきました。
沖縄県内で初めて会社を挙げて豚肉みそを作った「赤マルソウ」に、元社員の僕が潜入して「豚肉みその魅力」を存分にお伝えしていきます!
オフィスの周りは植物に囲まれていて、なんだかのどかな雰囲気です。建物入り口には、「赤マルソウ入口」と書かれた石柱があり、これは以前工場があった那覇市首里から持ってきたものだそう。
早速工場に潜入します。
こちらは、豚肉みそやドレッシングを製造する「蒸煮場(じょうしゃば)」と呼ばれる場所。
「工場」といえば、ベルトコンベアを使って製造から箱詰めまで一気に行うイメージを持つかもしれません。赤マルソウでは製品を作る「蒸煮場」と、製品を瓶に詰めて箱詰めする「充填場」の2ヵ所に分かれて人力で作業を行います。
製造管理記録表に書かれた配合をもとに製品を製造し、何年も努力を積み重ねた末にできたレシピなので、ここは企業秘密です。
赤マルソウの「豚肉みそ」づくりは、最初に豚肉の下準備から行います。
豚のひき肉をボイルした後、大型鍋のシンメーナービで大量の豚肉を炒めて水分を飛ばします。ここで水分を残すと細菌が発生しやすくなり、逆に火を通しすぎると、パサパサした豚肉になるため、この作業が長年培った職人技なのです。日々修行を積むことで培った技術あってこそ、豚肉みそのおいしさが保たれているのです。
下準備を終えた豚肉に赤マルソウの醤油で下味をつけ、いい香りがただよっています。
これだけで美味しそう…。
下準備が整ったところで、いよいよ釜に原料を入れていきます。
最初に、このモザイクをかけた怪しい粉…ではなく、大袋の砂糖を入れるのですが、これがとても重い…!
1袋30キロあります。30キロといえば、小学4年生の平均体重とほぼ同じくらいの重さ。僕は今、小学4年生を抱えています(いえ抱えていません)。
この大袋を抱えて人の手で入れるのだから驚きです。豚肉みそを製造している社員の国吉さんは、入社してから筋肉がついたとのこと。
続いて、みそが登場!
米みそと合わせみその2種類を使用。豚肉みその旨味と風味を引き立てるため、調合の割合には試行錯誤を重ねたそうです。
ここで釜の中を覗かせてもらうと…
おお。まるで飴のような状態!グオングオンと機械が混ぜています。最後に、下準備をした豚肉も混ぜ合わせ、30分ほど加熱。ここでも微妙な温度調整が必要なのです。
「蒸煮場」という名の通り、火ではなく蒸気で加熱します。この写真は、釜が破裂しないように中の水分を抜いているところ。この水分を抜くために出す蒸気の勢いが凄く、周囲が一気に蒸気で覆われます。
最後に、熱を冷ましたら完成です。もうお気づきかもしれませんが、実はなんと!化学調味料不使用なんです!!(安心・安全だ~)
出来上がった製品は、すぐ瓶に詰めるのではなく、「試験室」で塩分や糖度など分析し、いつも通りの味かを試食して確認します。「お客様が安心して食べられるように」と、とことん徹底されています。
分析を終えた後、寸胴鍋に入れて充填場へと運ばれます。
この充填場で目にする光景が相変わらず凄かったです。機械のような速さで正確に瓶詰めされていく豚肉みそ。ほぼ手作業なのに…。
1日におよそ4000個もの商品が出来上がり、重さにすると約560キロ!
小学生何人分の重さかもわからなくなってきました。
ベルトコンベアの上を流れながら、ラベルを張られていく豚肉みその瓶たち。
作業のラストは、商品として出荷できるかを目視で確認後、箱詰めされます。
これで商品の出来上がり!箱詰めされた状態で流通経路を通って県外やお土産売り場などに運搬されていきます。
社長にインタビュー!沖縄豚肉みそは、どのようにして誕生したのか?
ここまで商品の製造過程をお伝えしてきました。次は、元社員の僕も知らなかった「沖縄豚肉みそ誕生秘話」を赤マルソウの座間味 亮社長に伺ってきました。
本日はお忙しい中、よろしくお願いします!
社長
うん。久しぶりだね。元気にやってるの?
はい。お陰さまで…。では早速、最初の質問です。赤マルソウは、元々みそと醤油をメインに製造していましたが、どういう経緯で豚肉みそを作ることになったのでしょうか?
社長
バイヤーさんと商談をしていて、赤マルソウさんってみそ屋だけど、油みそも作れるんじゃない?という話になって。
商談中の話がきっかけだったんですね…!
社長
そう。昔も油みそを作ってはいたみたいなんだけど、その時はプラスチックのカップに入れていたから流通しづらしくて。それを瓶タイプにしたことで流通に乗せやすくなったんだ。
なるほど。しかし、もともと沖縄の家庭で作られていた豚肉みそを、あえて会社を挙げて製造したとき、大丈夫?それ売れるの?と周囲からネガティブな感情の抵抗があったと聞きましたが…。
社長
新しいことをする時ってやっぱり抵抗が生まれるじゃない。今までに作ってきた商品だけでいいんじゃない?っていう。これは人間の摂理でしょうね。
(深い話に入ってきた…!)
社長
最初は、そういった周囲の抵抗が確かにあったんだけど、これはもうやらないといけないと思ってね。長年の経験から来る直感ってヤツかな。インスピレーションというか。
(普段はわりと物静かな社長がそんな思いで突き進んできたとは…。)
社長
ただそれでも最初は売れなくてね。油みそはどの家庭でも作るじゃん?とかバイヤーさんに言われて。小さなスーパーでね。小さいカップにご飯を乗せてお客さんに試食を配って、ということを何度も繰り返していたら、少しずつ大きいスーパーにも置いてもらえるようになったんだよね。
最初は思うような結果が出なかったと。でも、めげずに営業を続けていたら実を結んだんですね。油みそから豚肉みそに名前を変更したのは何がきっかけだったのでしょうか?
社長
これもあるバイヤーさんと話をしていて、この商品良いんだけどね…惜しい。油みそっていう名前が良くない!惜しい!!って言われて(笑)
(またもやバイヤーさん!)
社長
それでスーパーでお客様にアンケートを取ってみたところ、「油」っていう言葉に引っかかる人がいることがわかって。ただ当時、沖縄県内では油みそという名前で売れていたから、すぐには変えなかったんだよね。その後、上り調子だった売上が横ばいになってきて、このままではまずいなって感じたのがきっかけでしたね。
今まで売れていた商品が売れなくなって危機的状況を感じたと?
社長
そう。だから県外向けと県内向け、2種類の油みそを作ったの。味は変えずに商品名だけを変えてね。県内向けは「油みそ」で販売して、県外向けを「沖縄豚肉みそ」という名前に変えて。
味は変えずに名前だけ変えたんですか?
社長
そうそう。それから東京に行くタイミングで、「沖縄豚肉みそ」を東京の大手企業に持っていったらご飯に合うといわれて即採用されて。その当時、ちょうど調味料ブームだったのもあって一気に売れ始めたんだよね。
今は当たり前のように多くのお土産売り場に赤マルソウの豚肉みそが置かれていますよね。
社長
本当嬉しいことだよね。
なんだかドラマを感じます。味を変えずに商品名を変えただけで売れたのは、調味料ブームだったからという要因以外に、やっぱりおいしかったからだと思います!(元社員、全力で肯定)
社長
ちなみにシークヮーサーこしょうも赤マルソウが最初!うちが初めて作ったの。あの時は、さすがに俺も自分で天才だと思った!笑
仕事好きな座間味社長による「赤マルソウ自慢ストーリー」は、この後もまだまだ語られ続けました。
いよいよ実食!工場で出来たての「沖縄豚肉みそ」をご飯と島野菜と一緒にいただく
さて、皆さんもそろそろ豚肉みそがどんな味か気になってきた頃だと思います。
いよいよ、実食します!
今回は、白米と沖縄県産の島野菜を用意しました。島野菜は、湯がいたハンダマとオオタニワタリ、塩もみした島ラッキョウ、生野菜の島ニンジンとカンダバー(かずら)の5種類です。
まずは、絶対においしいであろうご飯との組み合わせからいただきます!
この見た目だけで、もう…
ご飯の上にちょこっと豚肉みそをのせて…パクッ。
おっ…
おっ……
おいしい~!!!!!
ゴロっとした豚肉。ごはんに絡むみその甘み。そして、みその香りが鼻を抜けていく…。あれだけシンプルな原料なのに、これでご飯3杯はいけます。
続いて、黄色が特徴的な島ニンジンにつけていただきます。
うわ~これも合う~!豚肉みその味で分からなくなるかも、と思っていた島ニンジンの甘さをしっかり感じ取りました。野菜スティックはなんでも合いそう!
さらにピリッとした辛さの島ラッキョウにも。
これは、豚肉みその甘みが島ラッキョウの辛みを包むことで生まれた味がおいしくて、思わず思慮深くなった時の表情です。
先端がくるっと巻かれた島野菜のオオタニワタリにもつけて食べてみました。これもなかなかいける。全く違和感がない…。
僕が豚肉みそをおすすめする理由は、毎日食べても飽きないからです。
社員だった頃、自宅から持ってきた白米を豚肉みそと一緒に食べる日々を過ごしていました。その経験から豚肉とみそ、醤油、砂糖で作られた「シンプルな味付け」だからこそ、毎日食べても飽きがこないんだなと気づきました。
最後に食べるのは、ハートの形をしたカンダバー(かずら)の上に、モロヘイヤのような島野菜・ハンダマとご飯をのせて豚肉みそをトッピング!サンチュのように包んでいただきます。
うはっ。おいしい…。ハンダマの粘り気と癖のないカンダバーの組み合わせがマッチしておいしいですね。思わず笑みがこぼれました。
瓶に張られたラベルに「ご飯が旨い」と書いてある通り、熱々のご飯とベストマッチング!島野菜にもバッチリ合いました。豚肉みその食べ方は、赤マルソウのホームページに掲載されているのでご参考まで!
赤マルソウ公式サイト「沖縄豚肉みそを使った料理のレシピ」へ
豚肉みそがひとつあるだけで、食卓が楽しくなりそう!移住したての人の食卓、県外の人へのお土産、そして一番は、自分で食べることを全力でおすすめします。
明日もご飯の時間が楽しみだ~!
赤マルソウ
住所:沖縄県糸満市西崎町4-10-2
電話番号:098-992-0011
営業時間:9:00~17:00
定休日:土曜日、日曜日、祝日
公式サイト:https://www.akamarusou.co.jp/