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「沖縄、いやコザから世界を変える」
オキナワロックや「エイサーのまち」として宣言する沖縄県沖縄市のコザに、8月5日にできた「スタートアップカフェ コザ」。3Dプリンター、3Dモデリングといった最先端テクノロジーを導入した「沖縄ミライファクトリー」とともに、スタートアップの創業支援をサポートする拠点であり、ただいま東京のスタートアップ界隈から注目を集めています。
例えば、沖縄市民ならアプリやホームページ制作、Webディレクションを学べるプログラミングスクールがたったの2万円!?
*沖縄市以外のお住まいの人なら4万円。
さらに、屋上の空きスペースを使えば、スクールやイベント後にBBQ交流もできる!?
10月16日には、「まだ東京で消耗してるの?」で有名な、ブロガーのイケダハヤトさんも遊びに来たんだって!?
テンション高めでこんにちは、ライターの水澤です。
スタートアップカフェコザが主催したイベント「Startup Champloo PROXIMO」ぶりにこちらをお邪魔しました。
でも、ここを訪れるたびに日に日に大きくなっていく悩みがあるんです。
それは、「スタートアップってなんだろう?」ということです。
日本では、スタートアップを「世の中にまだない新しいビジネスで急成長した、創業したばかりの企業(団体)」として知られています。でも、スタートアップと聞くだけでカッコよく、華やかなイメージだけを持つ方も少なくありません。
「すっ、スタートアップ? 知っている、知っている。AIで、イケイケで、東京で、IPOしちゃおう」みたいな。*個人的な意見です
今回、福岡市で数々のスタートアップ支援を行い、現在はスタートアップカフェコザの代表をなさっている中村まことさんに、スタートアップの「ス」の辺りのお話から教えてもらいました。
さあ、スタートアップを知ってみよう!!
中村まこと:1977年生まれ、福岡県北九州市出身。琉球大学環境建築工学卒、在学中にライブハウスでPA(音響)として学び、その後沖縄のインディーズを牽引。その後、沖縄市にある音市場の設計や福岡市スタートアップカフェで若手起業家の支援に携わる。現在、沖縄市の行政と共に「スタートアップカフェコザ」を運営する。
STARTUP CAFE KOZA: http://startup-cafe.okinawa/
音楽に捧げた青春だから見えてきた 「インディーズブームとスタートアップ文化は似ている」
東京からコザに多くのベンチャーキャピタルが視察に来るなど、スタートアップ界隈から注目されていますね。
ありがとうございます。沖縄市に残る音楽文化とスタートアップの特性がいい感じに混ざってきたなと感じています。実業家でもある孫泰蔵さんも「バンドを結成するように起業しようぜ」とおっしゃるように、双方が持つ空気感がひかれあうのでしょうね。
ここまでは予想通りですか。
いえいえ、予想以上です笑
中村さんが沖縄で活動するきっかけをお聞きしたいです。
私はこう見えて大学在学中からライブハウスで音響エンジニアの修行を始めていました。その後、沖縄市にある音響会社にジョインするなど、沖縄のハードコアムーブメントにタッチしてきました。
だから、当時の音楽シーンに流れていた雰囲気が今のスタートアップの空気感にすごく似ていると思うんですよね。
具体的に、どこが似ていますか?
音楽もスタートアップも、基本的には原石を見つけて、磨いて、世界に羽ばたけるように準備してあげること。だから、全国を旋風していたインディーズブームを引っ張ってきた沖縄に魅力を感じたんです。
どうして音楽の道からスタートアップを支援しようと思ったのですか?
ライブハウスや施設などに取り付けるLE(音響)を設計する仕事をしていましたが、2010年にiPadが登場してから、もうモノを売る時代じゃない。これからは、デジタルサイネージと呼ばれる、あらゆる場所で、さまざまなディスプレイを通して鮮度の高い情報を売る時代になっていくと直感しました。
だから、同年に北九州市でそういった電子広告を実現する手法として、空間に映像を映す出すプロジェクションマッピングを安く開発する事業を始めたんです。
まさに今でいうスタートアップですね。
はい。でも、当時の北九州市は古き良き街で、サービスの価値よりも誰かの知り合いであることに意味があった。だから、私たちみたいな若造がいきなり街に入ってきて「これからは、情報を売る時代です」と言っても地域の人には信用されませんでした。まあ、今から思うと、世間から5歩先のことをやろうとしていたんでしょうね。
そんなときに孫泰蔵さんに出会ったんです!
2012年に孫さんの講演会がありまして、ここにいる若林さんが間を取りもってくれました。でも、そのときはまだ立ち話しで事業を説明しただけなので、本当にサービスとして行えるのかわからない、もしかしたら嘘をついているかしれない。でも後日、孫さんから東京にある上場企業から1000万円規模のプロジェクトを持ちかけてくれたんです。
なんでそう、相手を信じてポンっと仕事を持ってこられたんでしょうか。本当に驚きです。
きっと、若林さんの熱が伝わったんです。
当時から一緒に事業を行っている若林さん。
そのときに気づいたんです。スタートアップの世界って、場所を問わないし、フェアだし、チャンスにあふれている。もし、地方で苦しんでいる人たちがこのことを知ったら、もっとうまくいくんだろうなと。だから、私たちが支援する側に回ろうと思ったんです。
沖縄が日本、いや「アジア」のスタートアップの拠点になる!
沖縄とスタートアップ、どんなところに可能性を感じたのですか?
東京でのスタートアップは、そろそろ行き詰まりを感じていると思います。なかなかイノベーションが起こりにくいですし、通勤といった心理的なコストが大きい。あと、たとえ東京で起業しても東京で完結してしまうような構造になっている。
「じゃあ、沖縄はどうなの?」というと、日本一移民が多いから何百年前から世界に開かれていますし、沖縄市では世界42ヶ国ほどの人々が暮らす、多様な文化が共存し合っています。うちの妻も沖縄生まれなのですが、「沖縄から東京に行って働くのも、アメリカに行って企業に就職するのもそんなに変わらないわ」と言っていて、ウチナンチュはグローバル気質を持っているなと思いましたね。
スタートアップが栄える可能性が十分にあるわけですね。スタートアップの知見をお持ちだと思いますが、世界はどのように変化していますか?
今までは、企業や個人がイノベーションを起こす時代でしたよね。でも、スタートアップ新興地と呼ばれる地域では、コミュニティーベースでイノベーションが起きています。それは、いろんな会社をやっている人たちが「プロジェクトがあるから一緒にやらない?」と集まってきて、新しい拠点を作っている感じです。
沖縄にもコミュニティ文化がありますが、その違いはありますか?
うーん、沖縄はこれからかな。県内でいろんな人が動いているけど、線としてまだ結びついていない。ただ、スタートアップカフェコザを始めてまだ数ヶ月ですけど、ここで学んだシングルマザーの方がリモートで働くような「ニアショア」を目指すようになってきて、その前兆が現れていますね。
沖縄だとここ数年、貧困問題が叫ばれていますが、こういった働き方が広がるのはうれしいですね。
お父さん、お母さんが子どもを抱えている故に働ける時間が他の人より短くなり、結果として収入も低くなってしまう。でも、新しい働き方をすれば、たとえシングルで子育てしていても、家に居ながら仕事があって、そこそこの収入が得て、子どものそばにいられる。それが、特別なことじゃなくなるんです。
未来は明るくなりますね。ここから、どんな人材が育っていくと思いますか?
さまざまな経歴を持つ人たちが集まり、コミュニティを作りはじめていた
時間や場所、お金の存在から解き放れた人たちを増えていくと思います。そういったメンバーがここに集まって、世界を変えるようなスタートアップが生まれてほしいですね。
沖縄の土地柄がスタートアップに適している!?
自由になりたい、新しい働き方をしたい……。頭では分かっていても、沖縄に慣れてしまうとそれが難しいものとなっていきませんか?
沖縄の人たちには、なぜか東京に行かないと大企業の仕事ができないとか、賃金は安いものだとか、企業に就職しないといけないとか思っている人がいますよね。そういった固定概念からも自由に解き放ってほしいものです。あと、「沖縄では、スタートアップは無理だよね」と思うのももったいない。なぜなら、沖縄こそ世界のスタートアップ新興地になるだけの潜在的な要素を持っていますから。
なぜ、そう思いますか?
インドやイスラエル、アフリカといった世界のスタートアップ新興地の共通は、地域として危険性がなく、気候が温暖、あと食べ物が安全、かつ物価が安いこと。日本において、また近隣諸国を見ても適しているのが沖縄ではないでしょうか。
話を伺ってきて、私たちはスタートアップに関する情報が少ないだけと思いました。ただ、「スタートアップとベンチャーの違いってなに?」とかわからない人に向けて、中村さんならスタートアップはなんだとお伝えしますか?
生き方そのものですね。私たちの活動を通して、世界中の人が幸福になっていけばこれほどエキサイティングなことはないでしょう。
それを、沖縄市で起こしたい、と。
新しいムーブメント、文化ですよね。ただブームで終わらないように、スタートアップには大量行動が必要だとか、世間から半歩先に行く考え方とか、私が経験してきて知り得たことをお伝えしたいですね。
現在、ムーブメントはどのくらいまで来ていますか?
サーフィンでいうと大きな波、オーバーヘッドが来る前の踝ぐらいの波かな笑 オーバヘッドの波は確かに怖い。でも、踝からしっかり乗る準備をしていれば乗ることだってできる。自分自身も怖いけど、予想以上の反応をいただいているし、これから「CAMPFIRE×LOCAL」や「Base」とも連携して大きなムーブメントにしていきます。あと、行政からのバックアップもありますから。
スタートアップカフェコザでムーブメントを起こしていくメンバーたち
いいですね、行政との連携はいかがですか。
面白いんですよね、彼らは。「ここには、行政的な色あいを無くしてほしい」と職員の人から言っていただき、ここに遊び道具やこだわりのインテリアを置かせてもらっています。本当に、スタートアップへの理解があって心強い味方です。
市長や副市長も週一ぐらい遊びに来てくれます。きっとここが楽しいんでしょうね笑
次なるイノーべーションを起こす!? プログラミングスクール生に感想を聞いてみた
プログラミングスクール第1期を卒業なさった人たちに「ここで、何を学び、何を実現したいのか」を聞いてみました。
上間喜壽さん
どうして上間さんは、プログラミングスクールを受けようと思ったのですか?
僕は、上間弁当てんぷら店というお店を経営していますが、Webサイトの制作といったサービス全般は制作会社にお任せしているんです。
でも、いまいち予算とか理解できなくて。ここで、HTMLやPHPといったプログラミング言語を学ぶことによって、作業の工数や大まかな費用を知ることができ、きちんと交渉できると思ったんです。
Webディレクターのような、先方の要望を知った上でディレクションしていきたいんですね。
はい。あと、ここに来ると「やるしかない!」という強制力が働くので、ありがたいですよね。1人だと怠けちゃうので。
ここだけの魅力とはなんだと思いますか?
やはりプログラミングスクールが終わった後に、東京にあるWeb開発の案件を受けられること。実際に、クラウドワークスといった企業が関わっているので、スクールで学んだことがすぐに実践できるのは大きい!
お金をもらえるし、最高の待遇ですよね。
あと、プログラミングにとどまらず、さまざまな新しい働き方を知ることができますし、切磋琢磨するような仲間がいます。だから、息子にもここを受けさせたいですよね。
金城 愛未さん
ここのスクールは女性の方が多いですね。
はい。ここには、プログラミングを知らない主婦の方もいます。
どうして金城さんは、プログラミングを学ぼうと思ったんですか。
現在、Webデザイナーとして企業勤めしていますが、これからの時代は、デザインとプログラミング、どちらもできたほうがいいと思ったからです。
確かに。それが、沖縄に限らず重宝されるスキルになりますよね。
はい。あと私には、世界を旅行しながら暮らしていきたいという夢があります。だから、どんな国にいてもインターネットを通して、日本や世界から仕事を受注したいし、稼げるようになりたいんです
かっこいいですね!
実は、私も過去に公務員だったときがありまして。沖縄には公務員になることが一種のステータスだからそのように親にも育てられてきました。でも、ここに来るとさまざまな働き方があることに気づけるんです。
これからの女性の働き方として、そういった情報を知るだけでも価値がありますね。だから、世代問わずにここに遊びにきてほしいと思います。
スタートアップは、最新のテクノロジーといった新しい技術を身につけないといけないと思っていましたが、中村さんが取材中に口癖のように語っていた「技術よりも熱量が必要なんだ」が本質なんだろうと感じました。
「泥臭く、粘り強く、行動したものが成功する」
スタートアップが生き方そのものだとわかっていたら、こんなにも悩まなくてよかったのにな。次は生き方に悩んだらスタートアップカフェコザに相談してみよう。
以上、水澤でした。