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「あなたが見る沖縄は、本当に沖縄なの?」写真家・石川竜一が見つめた沖縄とは

水澤 陽介

2017.05.06

こんにちは、ライターの水澤です。

一般に「沖縄」と聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか。

真っ先に挙げられるのはやはり「観光」。観光に訪れると青い海に白い砂浜のビーチ。そして、赤い瓦屋根の上にあるシーサー、そういったイメージがほとんどです。ネットで調べて出てくる「沖縄」の写真もそういったものが多いでしょう。

そんな「沖縄らしい写真」ではない、写真家が見ていた沖縄の写真が沖縄県立博物館・美術館に集まりました。

写真家が見つめるリアルな沖縄とは、どのような世界でしょうか。

「写真家が見つめた沖縄 1972-2017」開催日の前日、ひとつひとつ写真を並べる写真家の七海さん。

今回は、4月25日から5月21日まで沖縄県立博物館・美術館で開催される沖縄本土復帰45年特別展「写真家が見つめた沖縄 1972-2017」に訪れました。

本展覧会は、沖縄県立博物館・美術館開館10周年とNHK沖縄放送局の前身であるOHK(沖縄放送協会)が設立されて50周年を迎えたことを機に開催された特別展。

本展覧会の出品作家であり、ディレクターを務める石川竜一さんに、写真との向き合いかたや写真家たちの思いをどのように感じてほしいかを伺いました。

受け継いできた沖縄を自分なりに捉えているか

石川 竜一(いしかわ りゅういち)
1984年沖縄県生まれ。2012年、「okinawan portraits」で第35回写真新世紀佳作受賞。2015年、写真集「絶景のポリフォニー」「okinawan portraits 2010-2012」で第40回木村伊兵衛写真賞受賞。同年、日本写真協会賞新人賞を受賞。その他、宇多田ヒカルや福山雅治などの様々なアーティストの写真を手がける。
水澤水澤

写真家として実績を積んできた石川さんが、なぜ展覧会のディレクターを引き受けたのですか。

石川さん石川さん

はじめ、僕がやるべきではない、と考えていました。そもそも、ディレクターとして生業にする方もいるし、そういった方に仕事があるほうがいいし。
ただ一方で、僕たちの世代は沖縄本土復帰45年に対して実感がないという思いがあって。自分たちの感覚で『復帰』を確認することに意味があると思い、引き受けました。

水澤水澤

見えないものを形にする、怖くはなかったですか。

石川さん石川さん

怖い、めっちゃ怖い。いくら行動しても当時を経験することはできないし、時が経っていくうちにリアルではなくなっていく難しさもありますよね。ただ、ディレクターとして写真を選ばせていただくうちに、本質的に人間がやることは変わらないと思ったんです。

水澤水澤

変わらないものとは?

石川さん石川さん

沖縄が少しでも良くなってほしい、という思いです。それを持ち続ける限り、僕たちは大丈夫だと思います。

水澤水澤

今回、ディレクターとしてお声かけした写真家の皆さんとは、こうした気持ちの共有ができていたと。

石川さん石川さん

はい。明確な基準はありませんが、写真に向き合いながら、いろんなものを見て、経験してきた写真家を選ばせていただきました。沖縄出身、移住者、本土から見た沖縄などさまざまで、狭い沖縄だから写真を通して繋がっています。それが、強さでもありますし。

水澤水澤

石川さん自身はどういった沖縄を見たかったんですか。

石川さん石川さん

復帰そのものではなく、復帰を匂わせるものを見たいという思いがありました。

水澤水澤

展覧会を通して、どのようなことを感じてほしいですか。

石川さん石川さん

想像力を使って感じてほしいですね。コレクションギャラリーには、先輩たちの作品がありますが、復帰45年を出来事として捉えるのではなく、自分なりに「復帰とは?」にたどり着いてほしいと思います。

水澤水澤

自分なりの復帰……。

石川さん石川さん

たとえば、「これが、りんごです」と教えてもらったら、与えられたりんごでしかありません。でも、自分のなかにはりんごがあって、それは香りかもしれないし、味かもしれない。
だから、展覧会を通して、沖縄のリアルを感覚として掴んでもらえればと思います。それは、喜怒哀楽なのか、家族の記憶なのか、ざらついた肌ざわりなのか。
そうやって興味をもつことで、人から与えられたものではなくなっていきますよね。リアルな沖縄に近づくと思います。

多様性ある沖縄では、もう立場や考えかたで切り分けられない

私も、沖縄に対してもっと想像力を働かせるために、4月24日に沖縄県立博物館・美術館で行われたギャラリートークに参加しました。展覧会の様子と共にお届けします。

「コレクションギャラリー」には、沖縄県立博物館・美術館に収蔵されてきた東松照明さんや平敷兼七さん、比嘉康雄さんといった、復帰を知る写真家の作品が並びます。

「本土復帰前を生きる、子どもたちの目には確かに強さがあって。意思をもって時代を生き抜くという覚悟といえばいいのか。そういった姿が、沖縄の街並みや日常から自然と見えてる作品をそれぞれ選ばせていただきました」(石川)

「沖縄にはこうした連続性がある」と石川さんは胸の奥にひっかかる思いを言葉にしながら伝えていきます。

県民ギャラリー ロビーでは、石川さんと高校生たちがワークショップを通して作った、高校生とつくる「2017 沖縄」写真展が行われました。

県民ギャラリーは、初沢亜利さんや豊里友行さんといった、今の沖縄を写してきた写真が並びます。

「はじめ、僕自身今の沖縄が想像もつかなくて。でも、こうやって並んだ写真を見ながら、『これが、沖縄なんだ』と発見できました」(石川)

3つのギャラリーは、「小さなこと・身近なもの」「繋がりや思いといった形が見えないもの」「繋がりが重なり、外部と関係性が生まれたもの」にそれぞれ分かれていると石川さんは話します。

「沖縄はもう立場とか、生まれとか、考え方とかで簡単に切り分けないところまできました。写真家も同じです。自然に広がっていく社会を感じてもらえればと思います」(石川)

いまやGoogleで沖縄を検索すると、沖縄らしい写真が溢れています。それを嘘か誠かで分けることができないし、誰かの意思が宿るものであることは事実です。

本土復帰45年目を迎える沖縄で、先人たちはどのように生き抜き、関わりを持ってきたのか。そして、多様な時代を生きる私たちは、写真というフィルターからなにを思うのか。

ギャラリートーク中も、自分なりの言葉で作品を説明することをはばかってきた石川さん。それは、自分なりに沖縄を考えてほしいからという思いが強く、根幹としてあったからではないでしょうか。

展覧会インフォメーション

沖縄本土復帰45年特別展「写真家が見つめた沖縄 1972 – 2017」
http://www.nhk.or.jp/okinawa/fukki45/
日程:2017年4月25日(火)~5月21日(日)
会場:沖縄県立博物館・美術館 (沖縄県)
時間:9:00~18:00(入場は閉場の30分前まで/金・土曜は20:00まで)
休館日:5月1日(月)、5月8日(月)
料金:コレクションギャラリーの入場には観覧券が必要です。
【一般】310(250)円
【高校・大学生】210(170)円
【県内小学・中学生】無料
【県外小学・中学生】100(80)円*「安次富長昭展(コレクションギャラリー2)」と「沖縄美術の流れ(コレクションギャラリー3)」も観覧できます。
*( )内は、20名以上の団体料金です。
*70歳以上の方、未就学児、障がい者手帳をお持ちの方および介護者1名は無料(証明書等の提示が必要)